高血圧の治療薬(降圧剤)

血圧測定器

高血圧とは血圧が正常範囲を超えて高い状態が続く病気で、血圧が高い状態を放置していると動脈硬化を促進して脳卒中や心疾患などの恐ろしい病気を招いてしまいます。

高血圧の治療では、血圧を下げる効果のあるお薬を長期にわたって服用します

高血圧治療薬(降圧剤)は、何らかの原因で血圧が高い状態が維持されている場合に、その血圧を低下させる目的で使用される医薬品です。

高血圧治療薬によって血圧の上昇を抑えることで、血管の破裂やその他の危険を防いで大きな病気が発症するのを防ぐのです。

高血圧治療薬の歴史

高血圧と寿命の因果関係を調査しはじめたのは20世紀初頭のことで、アメリカの生命保険会社が保険加入者の血圧のデータを集め、心筋梗塞や脳卒中との因果関係について調査していました。

しかし1950年頃では、高血圧は生命維持に必要な器官に血流を促すには必要不可欠であると信じられていたのです。

それが1940年代後半から1950年代にかけて、医師の間で血圧の上昇が心血管疾患のリスクを高めるということが認められるようになりました。

日本においても、同じ頃に結核などの感染症患者が減少した傍ら、脳血管障害による死亡率が死因の第1位を占めるようになったことをきっかけに、高血圧のリスクが認知されるようになったのです。

1940年頃から高血圧を治療するお薬が導入され、リスペリンというお薬が血圧を下げる目的で使用されていましたが、多くの患者に効果が見られませんでした。

ヒドララジンは効率よく血圧を下げることができましたが、耐性がつきやすく副作用も出やすいというデメリットがあったのです。

その後、血圧をコントロールする研究と並行して次々に新薬が開発・発売されていき、今日では高血圧の治療薬が数多く存在しています。

高血圧治療薬の主な仕組み

高血圧治療薬といってもさまざまな種類があり、患者さんの状態や併発している病気などによって使い分けられていますが、大きく下記の5つの作用に分けられます。

・血管に直接作用して血圧を下げる
・心臓に働きかけて血液の量を減らし血圧を下げる
・尿の量を増やして体内の血液量を減らし、血圧を下げる
・自律神経に働きかけて血圧を下げる
・血圧を上げる物質を抑えて血圧を下げる

場合によっては2つ以上の降圧剤を併用して治療を行うことがあります。
降圧剤でも種類によって副作用や併用禁止薬などの注意点が異なるため、使用する際には医師の指示に従いましょう。

高血圧治療薬の種類と作用

高血圧治療薬は大きくわけて7種類あり、それぞれ作用や特徴が異なります。

高血圧の治療薬の種類
薬の種類 作用 特性・副作用
Ca拮抗薬
(カルシウム拮抗薬)
血管を収縮させて血圧を上げるホルモンであるアンジオテンシンⅡの働きを抑えて、血管を広げる。 めまい、動悸が起こることがある。
ARB
(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
血管を収縮させて血圧を上げるホルモンであるアンジオテンシンⅡの働きを抑えて、血管を広げる。 めまい、動悸が起こることがある。
ACE阻害薬
(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
アンジオテンシンⅡを生成する酵素であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑えて、血管を広げる。 痰をともなわない咳(空咳)が起こることがある。糖尿病、脳卒中、心筋梗塞にも有効。
レニン阻害薬 アンジオテンシンⅡの生成に関わる酵素であるレニンの活性を抑えて、血管を広げる。 頭痛や下痢が起こることがある。
α遮断薬 血管にあるα受容体を遮断し、血管を広げる。 立ちくらみを起こしやすい。
β遮断薬 心臓にあるβ受容体を遮断し、心拍出量を減らして心臓の過剰な働きを抑える。 安静時の心拍数が通常より少ない徐脈を起こすことがある。
利尿薬 体内の余分な水分・塩分・カリウム・老廃物の排出を促し、血液量を減らす。 腎臓が悪い人は、尿酸の血中濃度が高くなる高尿酸血症を起こすことがある。

①Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬)

Ca拮抗薬は血管を拡張させて血圧を下げるお薬です。
動脈の血管壁には平滑筋細胞でできた層があり、この細胞が収縮することで血管は細くなり血圧が上がります。
細胞の収縮は細胞内にCaイオンが流れ込むことで起こります。

Ca拮抗薬では、Caイオンの通り道(カルシウムチャンネル)を塞ぐことによって細胞の収縮を抑制し血管を広げて血圧を下げるのです。

Ca拮抗薬の主な副作用には、頭痛や動悸、ほてりなどがあります。

②ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)

ARBは、アンジオテンシンⅡという血圧を上げるホルモンの作用を邪魔することで血圧を下げる作用を持つお薬です。
カルシウム拮抗薬とともに降圧薬の中心となるお薬で、カルシウム拮抗薬に比べると降圧効果は劣りますが、日本では特によく処方されています。

ARBは受容体に作用して、アンジオテンシンⅡが受容体に結合するのを阻害します。
するとアンジオテンシンⅡの作用である血圧上昇が抑制され、結果血圧を下げることができるのです。

ARBでは心臓への負担を軽減したり動脈硬化や糖尿病を予防したりする効果も期待されています

ARBを使用中にめまいや動悸などが副作用として起こる場合があります。

③ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)

ACE阻害薬はARBと似た作用を持ち、アンギオテンシンⅡの産生を抑えて血圧を下げます

アンギオテンシンⅡは体内で心臓の肥大化や腎臓の線維化(腎臓の炎症などで腎機能が低下する状態)を促進する作用もあるといわれており、ACE阻害薬はこれらの作用を抑えて心臓や腎臓を保護する効果も期待されます。

ACE阻害薬は、空咳(痰をともなわない咳)が副作用として起こりやすいのが特徴的です。

④レニン阻害薬

腎臓から分泌されるアンジオテンシノーゲンという物質は、レニンという酵素の作用でアンジオテンシンⅠに変換され、血液にのって肺を循環している中でアンジオテンシンⅡに変わります。

レニン阻害薬は、レニンを直接阻害することによってアンジオテンシンIの産生を抑え、結果アンジオテンシンⅡによる血管収縮を予防して血圧を下げるのです。

レニン阻害薬の副作用として、頭痛や下痢が起こることがあります。

⑤α遮断薬

α遮断薬は、交感神経系の伝達物質であるノルアドレナリンが血管のα受容体と結合するのを抑制し、血管の収縮を抑えます

α1受容体は前立線や尿道にもあり、α遮断薬の作用によって排尿改善効果も期待できることがあります。

⑥β遮断薬

交感神経系の興奮は、ノルアドレナリンという神経物質がβ受容体に結合することで血管が収縮されて血圧が上がります。

β遮断薬はβ受容体に結合してノルアドレナリンが結合するのを防ぎ、血管が収縮されるのを防ぐのです。

β受容体にはβ1、β2、β3の3種類があるのですが、循環器系では心臓にβ1が存在し、血管にはβ2が多く存在しています。
β遮断薬では、これら受容体を選択的に遮断して効果をより高いものにする工夫がされているのです。

β遮断薬は気管支収縮作用があらわれることがあるため、喘息など気管支の病気を持つ患者さんには使用されません。

⑦利尿薬

血液中の水分量が増えると、血管を流れる血液の量が増えるため血圧が上がってしまいます。
利尿薬は尿の量を増やすことで血液中の水分量を減らし、血圧を下げる作用を持つのです。

ここで使用される利尿薬はナトリウム(塩分)の排泄を促すことで尿量を増やします。

腎臓に疾患がある方は、利尿薬を使用すると尿酸の血中濃度が高くなり高尿酸血症を起こす恐れがあります。

また、尿の量が増えて体内の水分量が不足してしまうと、脱水症や低カリウム血症などを引き起こす可能性もあるので注意が必要です。

高血圧治療薬の注意点

高血圧治療薬には色々な種類がありますが、どれも降圧作用があるからと適当に選らんでしまうと危険です。

自分の意思で決めるよりも、かかりつけの病院で診察を受けてどれが良いのか相談することをお勧めします。

高血圧治療薬の使用上でもっとも注意しておきたいのが、血圧が下がり過ぎること(過降圧)です。
過降圧を起こすと、ふらつきや転倒を起こすことがあり怪我につながる恐れもあるでしょう。
それを防ぐには、適度に血圧を測る習慣を身につけることをお勧めします。

血圧が下がり過ぎていると判断した際には、医師に相談しながら減薬したり変更したりして対応しましょう。

よくある質問

Q:高血圧のお薬はずっと飲み続けなければいけないのでしょうか?

A:多くの場合、高血圧の治療薬は長期にわたって服用を継続する必要があります。お薬を飲み続けることで血圧を正常に保ち、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を予防することができるのです。血圧が正常に戻ったからと言ってすぐに断薬すると、血圧がまた高くなる危険性があるので、医師の指示に従って服用を続ける必要があれば続けましょう。

Q:高血圧治療薬の効き目は飲み始めてどれくらいで現れますか?

A:高血圧は薬物療法だけで治りやすいものではなく、食事療法や運動療法も兼ねて長期間継続しなければ目に見える効果は出ないでしょう。お薬だけに頼らず、生活習慣も整えながら長期間治療を行ってください。

脂質異常症治療薬(高脂血症のお薬)

詰まった血管

脂質異常症はかつて高脂血症と呼ばれていました
脂質異常症は血液中のコレステロールや中性脂肪が異常に多く、動脈硬化などを促す症状を指します。

脂質異常症を放置しておくと、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞といった恐ろしい病気を引き起こしてしまいます

脂質異常症の治療を受けている方やコレステロール値が高いと感じている方のために、脂質異常症治療薬の種類や作用のしかたについてまとめました。

脂質異常症治療薬の種類

脂質異常症治療薬

脂質異常症と診断されると最初からお薬が処方されるわけではなく、まずは食事療法や運動療法など生活習慣の改善によってコレステロール値や中性脂肪値の改善を図ります。

それでもよくならない場合に、主に下記の治療薬のいずれかが使用されます。

①コレステロール値を下げる薬

脂質異常症の中でもコレステロール値が高いという場合には、主にコレステロール値を抑える働きを持つお薬が使用されます。

HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン系薬剤)

スタチン系薬剤は肝臓でのコレステロール生成を抑え、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させる作用を持つお薬です。

肝臓でコレステロールが作られる時、HMG-CoA還元酵素という酵素が使われるのですが、スタチン系薬剤はこの酵素の働きを阻害します。
するとコレステロールが不足した状態になるのですが、血液中のコレステロールが肝臓に取り込まれて、その結果血中のコレステロール値が下がるのです。

【代表的なお薬:アトルバスタチン(リピトール)

陰イオン交換樹脂製剤

陰イオン交換樹脂製剤は、消化管内で胆汁酸を吸着しそのまま体外へ排泄させてコレステロールを下げるお薬です。

肝臓で生成されたコレステロールの一部は胆汁酸に変換されて排泄されるのですが、その多くは腸で再吸収されて再度コレステロールとして使用されます。

陰イオン交換樹脂製剤では、腸管内で胆汁酸に吸着することにより、胆汁酸の腸管循環を阻害する働きがあります。

【代表的なお薬:コレバイン】

プロブコール

プロブコールはコレステロールの胆汁への排泄を促進し、血液中のコレステロール値を低下させるお薬です。

陰イオン交換樹脂製剤は胆汁酸が腸内で再吸収されるのを防ぐのですが、プロブコールは胆汁酸としてのコレステロールの排出を促します。

【代表的なお薬:シンレスタール】

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬は、小腸におけるコレステロールの吸収を抑えて、血液中のコレステロールを低下させるお薬です。

食事や胆汁由来のコレステロールは小腸コレステロールトランスポーターという物質の働きによって小腸に吸収されます。

このお薬には、小腸コレステロールトランスポーターを阻害する作用があり、小腸におけるコレステロールの吸収を抑制します。

【代表的なお薬:ゼチーア】

②中性脂肪(トリグリセライド)を下げるお薬

中性脂肪が増えすぎると、悪玉コレステロールが増えて善玉コレステロールが減り、その状態が続くと動脈硬化が進行し心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因となります。

中性脂肪の値が高いことによる脂質異常症では、主に下記の3種類のいずれかが使用されます。

ニコチン酸誘導体

ニコチン酸誘導体は、ビタミンの一種(ビタミンE製剤とニコチン酸がくっついたもの)で、総コレステロールとトリグリセリドの両方を減少させる働きを持ちます。
高脂血症を改善する作用とともに、血行をよくする作用があります。

【代表的なお薬:ユベラN】

フィブラート系薬剤

フィブラート系薬剤は肝臓におけるコレステロールやトリグリセリドの合成を阻害します

さらに善玉コレステロールを増やして、悪玉コレステロールの代謝を促進する作用も発揮します。

【代表的なお薬:リピディル】

EPA製剤

EPAとはイワシやサバなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸のひとつです。
血小板に働き、血栓が出来るのを予防したり中性脂肪を下げたりします

脂質異常症治療薬の副作用

脂質異常症治療薬でよく見られる副作用として横紋筋融解症があります。
とくにHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)とフィブラート系薬剤で起こりやすいとされています。

お薬によって出やすい副作用が異なります:

・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン):手足のしびれ、痙攣、手足に力が入らない、筋肉痛など

・陰イオン交換樹脂製剤:便秘や腹部膨満感、皮膚症状など

・プロブコール:失神、消化管出血、末梢神経炎、横紋筋融解症など

・小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:横紋筋融解症やアナフィラキシー様症状、肝障害など

・ニコチン酸誘導体:かゆみ、顔面潮紅など

副作用の多くは軽いもので時間の経過とともに治まりますが、副作用が長く続いたり重い副作用が出たりしたら、ただちに医療機関を受診するようにしましょう。

よくある質問

Q:脂質異常症のお薬は飲み続けないといけませんか?

A:脂質異常症の基本的な治療は、食事療と運動療法です。食事と運動でも症状が改善されない場合にお薬を処方されるのが通常です。コレステロール値や中性脂肪値を理想値まで持っていくことが目的ですので、これらの値が改善すれば薬を飲み続ける必要はありません。自己判断で薬の服用を開始したり減薬・断薬したりするのではなく、病院で定期的に検査を受けて医師の指示に従いましょう。

Q:妊娠・出産期の薬物療法は?

A:脂質異常症の薬物治療を受けている女性で妊娠された場合は、かかりつけの医師に相談しましょう。お薬によっては妊娠中・授乳中の方は服用してはいけないと決められています。自己判断で服用を継続せず、かならず主治医に相談してください。

過去にチェックした商品

CHECKED ITEM